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メンバー羽太のドキュメンタリー


by habutobuto

「馬の声」

90年代後半に牝馬ながら、大記録を残し、ドバイ遠征レースの際に散った名馬がいる。ホクトベガ。
牝馬三冠のかかったエリザベス女王杯に挑むベガに対して、ステップレース惨敗のホクトベガは全く人気がなかった。ベガ優勢の雰囲気の中、直線内ラチをスルスルと伸びてくる。
「ベガはベガでもホクトベガ!」の名実況が昨日の事のようにも思える。
エリザベス女王杯勝利後のホクトベガは冴えず、女王杯自体フロックなのではという見方する人もいた。
不振が続き障害戦への転向も考えられ、障害練習をする時期もあったほどで。障害練習は不振が続く馬にリズムを取り戻す効果があるのでは?という事も囁かれてだした頃でもあった。
実際にグランプリ2冠の大逃げのメジロパーマーが障害転向から平地に戻り、リズムを取り戻した例があったりした。
芝レースしか使った事がなかった不振にあえぐホクトベガに転機が訪れる。
地方交流競争のダート戦への出走。
駄目なら引退もあったことだろうが、ダートに変わったからか圧巻のひとまくりで勝ち、周囲を驚かす。
障害練習の効果なのか、気持ち良さそうに走っている。
その後も地方のダート重賞に出走し続けて、地方競馬の雄達をひとまくりで子供扱いにする。確か20馬身くらいちぎって勝ったレースもあった。
ダート戦負けなし10連勝した。
芝のG1にもたまに出てきたが勝つことはなかったのです。
この時点で歴代牝馬総賞金トップ、後のウォッカに越されるまではホクトベガの天下だったのです。
勝ち続けた末にドバイワールドカップに出走することになり、鞍上も加藤からトップジョッキーの横山典弘へ乗り変わります。圧勝の期待が膨らみます。しかしレース序盤に悲劇が起きてしまいます。ホクトベガは何かにつまずき大きく転倒、後続の馬も激しく接触し、横山も投げ出される格好に。
場内はどよめきが止まず、映像で見るホクトベガは予後不良であることが見た目で分かる程、脚が折れていました。横山は奇跡的に軽症で、後に「ホクトベガが僕を投げて助けてくれた」という事も言っていました。
ドバイで引退し、海外の有力な種馬達との交配も予定されていましたが、叶わぬ事となってしまったのです。
横山はドバイ遠征のこの騎乗から、スタイルが変わり、何がなんでも勝ちに来なくなったと言われています。
ゲートを出て、「馬の声」を聞きながら乗るというスタイルになっていったのです。レース中最後尾に1頭大きく離れて走る馬がたまにいます。結構、横山です。「馬が行きたがらないのに行かしたら」という事らしく、そのまま見せ場なく終わる事が多いなか、劇的な追い込みを見せる時もあるのです。
馬の声とは、馬が出す普段と少しだけ違う動き、仕草を人間がどれだけ感知出来るか?それは馬への愛情がなければ感じれられない事であると思うし、レース中に突然走るのを止めさせるのもジョッキーの腕の見せ処であると思うんです。止める事により、馬が軽度の故障で済む場合も多々あるはずです。勝つだけが見せ処ではないと思うんです。横山は今年のダービーをワンアンドオンリーで勝ちました。ホースマンにとっては栄光の勲章です。
その裏にはあのホクトベガを予後不良にしてしまったという事にさいなまれ続けてきた横山もいるのです。5日に開催された世界最高峰と言われる凱旋門賞(フランス)にゴールドシップという馬で横山騎乗。後方のままレースを終えているのです。
本当の一流は勝つことだけでなく、馬の声を聴けるジョッキーなのかもしれません。
そういえば輓馬の帯広競馬場にも馬と話が出来るという調教師の娘さんがいる事を思い出しました。彼女は普通に馬と話せると 帯広競馬の広報の人が言っていました。
by habutobuto | 2014-10-18 10:00